
第四の裁きが終わった。今夜も俺は生き延びた。
支配者たるジャンヌ・ダルクは撤退、従者であるセイバーのジル・ド・レェは消滅。
ルーラーであるジャンヌが相手と知った時は身構えたが、隣にいるアヴェンジャーのお蔭で助かった。
ジャンヌはまだ消滅していない。これから先の “裁き”の間に乱入してくるんだろうか。
いくらアヴェンジャーが有利相性とはいえ気を引き締めないといけない。しっかりと見極めねば。
……『憤怒』の支配者とはいったが、これ程までにジャンヌと縁がないものがあるとは。
どちらかといえばずっと『憤怒』していたのはアヴェンジャーの方だった。
今でも猛り狂っている。これはそっとした方がいいんだろうか。
ああ、でも、頭がぐらぐらする。倒れそうだ。
「――っ」
「おっと。どうしたマスター?ルーラーを追い詰めたのが堪えたか?だが選んだのはおまえだぞ?おまえが奴の手を振り払いこの復讐者を担ぎ上げたのだ!」
「……そうじゃなくて、頭がくらくらするだけ」
「そうか。供給してやろう」
「――――んむ、」
流れるように舌を入れながら唇を奪われる。
初めてやられたのは昨日だったかそれとも一昨日だったか。
密着する体。苦しい息。背中に回される腕。
体の奥から熱がわいてくる。
別の意味で意識を失いそうだ。そう思ったところで解放された。
「ぷはっ……はっ……あっ……」
「いい眺めだなァ、マスター?」
「……」
「はは!気を害したか?だがそのおまえの表情!劣情に浮かされた乙女のようだ!何を期待した?」
「ちが……いや……そう、なのかな」
「んん……?」
「キミにキスされると体が熱くなって、鼓動も早くなるし、なんか責任とりやがれっつーか……」
「……」
「ちょっと確かめさせて」
「んんっ!?」
初めて自分から同じことをしてみる。
一瞬強張ったアヴェンジャーだったけど、すぐに対応されて誘いこむように舌を絡まされる。
くそう、これじゃあわからない。
「どうだ?」
「あまりよくわからない……」
「くはは!魔力が足りなかっただけであろうよ。激しい死合が続くからなあ?」
「そう、か……」
「何を落胆している?」
「落ち込んでなんかない……。部屋に戻ろう」
「クハハハ!それでいい!」
歩き出し、裁きの間を後にする。
同じ道、同じ部屋にだ。本当にこの先に出口はあるのか。
アヴェンジャーが導く先とは何なのか。かといって立ち止まることはできない。
隣を見るとすっかり機嫌はなおったらしい。よかった。
「アヴェンジャー、オレ、後悔してないからな」
「……?」
「キミとこの七つの裁きを超える。その決意は初めに会った時と変わらない。他でもない、俺が決めたんだ。最後の日までキミの手を取るよ」
「……そうか」
「キミがいいんだ、アヴェンジャー。一緒に此処を出よう」
「……そうか」
明確な答えは返してくれない。
それでも、これは伝えないといけないと思った。
最初はなんだこいつと思った相手が、早くも気に入ってしまったんだから。
こいつと歩んでいきたい。この塔限りの相棒では終わらせない。
どれ程かかっても諦めてやらない。
――待て、しかして希望せよ、だろ?
